統計検定準1級、最近機械学習に対する出題が増加傾向にあります。以前は無視してもよい分野だったのですが、そうも言ってられなくなってきました。統計検定のバイブルと言っても過言ではない日本統計学会公式認定 統計検定準1級対応 統計学実践ワークブック、とても良い本なのですが、ベイズ周りの記述がかなり浅く、概念の理解に繋がりにくいのが難点です。
そこで本日はレベル、目的別にベイズ統計学の理解につながる教科書、本をいくつか紹介したいと思います。
- 1. まずはここから!ベイズ統計学の初歩
- 2. ベイズ統計の名著で考え方を学ぶ!
- 3. 待望の和訳版出版!数式的な解析を学ぶ
- 4. 1冊でMCMCの理解を深める!
- 5. 実際に実装してみる
- 6. さらなる学習のために
1. まずはここから!ベイズ統計学の初歩
この本はベイズ統計学ってなに?ベイズの定理を高校で習ったことはあるけど...くらいの方が対象です。自分もこの本から入りました。この本は少し古い(2012年)のですが、古典的な頻度論とベイズの考え方の違いを同じ例を使って説明してくれたり、図や表、説明、具体例を交えながら解説してくれるのでとてもおすすめです。非常に簡単な例から始まって最終的にはナイーブベイズフィルターやMAP推定、ベイジアンネットワークまで応用を触れてくれる本です。初歩のうちから応用、実用を見据えて勉強するのは非常に役に立つので良いかと思います。
一応2年前の自分の黒歴史クラスの記事ですがレビューもあります。
2. ベイズ統計の名著で考え方を学ぶ!
この久保先生の本は名著です。自分の周りにいる統計検定合格者のみならず、ベイズを勉強している人はこの本で学んでいる人が非常に多いです。この本の良いところは、前提知識が高校数学程度で書かれている割に、到達点がかなり高いところです。数式のいじり方を書いてくれている本はありますが、この本は統計モデリングの方法を書いてくれています。実際の解析でのピットフォールや、モデルの限界、その先の対処法を書いてくれているので非常に勉強になります。最初は非ベイズでのモデリングから始まりますが、最後の方の章ではMCMCや階層ベイズなどベイズモデリングによる解析まで触れてくれます。統計パートは実装は大部分がRですが、Rがわからなくても理解ができるような構成になっています。
3. 待望の和訳版出版!数式的な解析を学ぶ
この本は2009年にワシントン大学の院の講義ノートをもとに英語版が出版され、ベイズ的な統計モデリングの初歩を学ぶ本として有名でしたが、時は2022年、ついに和訳され日本語での入手が可能になりました。最初の方の章ではベイズ統計の考え方について触れ、徐々に共役事前分布の計算方法と導入が進み、階層ベイズモデリングやMCMC、混合モデルへと進んでいきます。統計ソフトを利用した実装も紹介されていますが、Rを用いた実装になっています。
やや和訳がわかりにくいところや説明が難しいところがありますが、非常に勉強になります。ただ統計検定準1級レベルとしてはややレベルを超越しているところがあるので余力、あるいは興味がある人向けになるでしょうか。
4. 1冊でMCMCの理解を深める!
MCMCのアルゴリズムが一冊で本にまとめられています。この本の良いところは実装が著者のgithubで複数言語で書かれているところです。C++とPythonがあります。
普通の本だと1章分くらいしか書かれていないところを本1冊使って書かれているので説明が重厚でわかりやすいです。とてもおすすめです。
5. 実際に実装してみる
統計学はベイズに限らず、自分で実装するのが一番勉強になります。そんな時の本を紹介します。
僕はRとPythonを主に使いますがPythonが一番使い慣れているので、Pythonで実装を学ぶのが一番ストレスがなく勉強になります。同じような方はいると思うので実装を学びたい方のための本を紹介しておきます。特に上の本は2022年出版で新しいのでライブラリも比較的新しいものが使われててモダンな実装を学べてよいです。
6. さらなる学習のために
本当に余力がありさらなる学習をしたい人にはパターン認識と機械学習(PRML)がおすすめですが、統計検定的にはオーバーワークです。この本は古典的名著で、情報系大学生や院生の輪読でよく使われているので、独学したい人はその辺の資料をネットで探してみると少しは読みやすいかもしれません。下巻もあります。余力があればぜひ。
以上、ベイズ統計を学ぶための本を紹介していきました。統計検定対策的な意味だと上から順番に勉強していくのが良いと思います。少しでも参考になれば。